過去ログ 「この景色、涙色」
大学の図書館で一人パソコンをうつ。
すると真正面の女の子が、
一目に触れないように気を使いながら、
一人涙を流していた。
失恋したのかな。
ぼーっと窓の外を眺めて、
時々思い出したように涙が溢れ始める。
もう何時間もあの状態。
俺もつられて窓を眺めてみる。
いつもゆっくりした景色なのに。
いつもと変わらない景色なのに。
今日は大学の課題に追われているせいか、
景色までもがせわしなく見える。
人はこうも心境で見えるモノが違うもんかねぇ。
この景色は涙を通して見ると何色に見えるのでしょうか。
先日、空港へ友人を見送った日を思い出す。
こんな事を言うのもなんだが、
彼には特に思い入れがあるというわけではなかった。
とあるツアーで、たまたま縁あって知り合ったというだけの人だ。
気軽に見送った後、気軽に帰ろうとする僕。
ふと横で待合所へと向かう誰かを涙で見送る女性がいた。
僕が気軽に見ているこの景色は、
彼女にとってはどんなに重い景色なのだろう。
みんな同じ地球で生きている。
けれど例え同じ場所に居たとしても、同じ世界を生きているとは限らない。
僕にとっての何でもない日は、
誰かにとっては特別な日であり、
僕にとっての大切な日は、
誰かにとっては淡々と過ぎていくその他の毎日の中の一つにすぎない。
この世界は、人の分だけの景色がり、人の分だけの物語がある。
図書館の彼女に、
いつかその悲しみの分だけの喜びがやって来ることを願います。
「涙は種です。
ぽろりとおちて芽を出します。
喜びの涙から喜びの花が咲くことは有名ですが、
悲しみの涙から優しさの花が咲くことはあまり知られていないようです。」