過去ログ 「今日此処に居ることをアートとする」

タビストの卵

2009年07月06日 21:08

俺にもお気に入りの場所というものがある。
家の近くの海岸にできた公園にある一つの空間。


膝上くらいの高さの塀は、しばらく直線に延び、
途中何かを思い出したように進路を変え、
そのまま海へと辿り着く。

その先端がそこだ。
俺のお気に入りの場所。



俺のお尻ギリギリくらいの幅のそのスペースは、
自分一人の世界を作るには十分な広さ。

塀ギリギリのところで座り、足を宙に、海の上に放り出せば、
爽快感極まりない。

顔を上げ、水平線に視線を移すと、空中を泳いでいる感覚にさえなる。




波が眼下でうねる。

決して視ることのできない風は、
俺を横切りながらその存在を主張する。

決して映ることのない陽の温かさは、
皮膚をさらけ出し、さし出すことで初めて感じることができる。

この場所は俺に自然とお喋りをする時間を与えてくれる。


優しい時間。。

きれいな景色。。。。



けどね、
今日俺が言いたいことはそういうことじゃなく。


視野をもっとマクロに。
地上を俯瞰している鷹のような目線で。
スクリーン越しの観客のような目線で。



俺は今、この美しい景色の一部として俺が在ることが嬉しいんだ。

俺は確かにこの美しい絵を創る一員。
俺の存在が絵のワンポイントに、アクセントになっている。
塀の上の何も無かった空間が意味あるものになっている。




美しく、壮大に飾っている彼らを見て、
「素晴らしい」と、焦がれていた。

でも、きっと俺だってこの絵を彩る一役割になれているんじゃないか、って。
美しくも、壮大でもなくても、
不恰好で、物憂げな背中が、
また違った魅力を加えているんじゃないか、って。


その事がただただ嬉しい。

その事がただただ嬉しい。

ただそれだけなんだけど。




波、風、夕陽、そして俺。